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再注目!映画『まほろ駅前多田便利軒』とくるり・岸田による劇伴の魅力

映画『まほろ駅前多田便利軒』は2011年に瑛太、松田龍平主演で映画化された作品であり、三浦しをんによる原作は2006年に直木賞を受賞した話題作。後に『まほろ駅前番外地』、『まほろ駅前狂騒曲』のシリーズも映画・ドラマとして映像化され、それぞれ作品として高い評価を受けている。

本稿では、映画の魅力と共に、ロックバンド・くるりの岸田繁が初のソロ名義ですべての劇伴を担当したことについても注目し、その魅力について分析した。本シリーズを見たことのある方もまだ見たことのない方も、改めて音楽にも注意して鑑賞してみて欲しい。

■バツイチ男二人が営む便利屋が舞台

東京の南西に位置する空想の町=「まほろ市」(撮影は町田市)で繰り広げられる、便利屋を営む多田(瑛太)と多田の元クラスメイト・行天(松田龍平)、二人の物語。

二人は年の瀬に偶然出会い、行天は多田のところに転がりこむ。

ドタバタ、というのではない、淡々とした日常。しかし、なんてことのない町の、なんてことのないわけではない犯罪に巻き込まれながらも、結婚に失敗した二人の男の<やりなおし>を巡るテーマが、徐々に掘り下げられていく。

■次々と繰り出される小ネタ的笑いの果てに…

物語は、淡々と進んで行くが、これは大森立嗣監督の持ち味と言えるのかもしれないが、うっすらとした小ネタ的笑いがさざ波のように細かく繰り返しているため、軽いめまいというか、二日酔いのような気分にさせられる。

そして、大森監督の実の父である赤麿児を筆頭に、岸部一徳、松尾スズキら、くせ者俳優がまた、「悪い夢を見てしまった」ような現実と非現実の狭間を行き来するような映画特有の世界観をうまく盛り立てている。

そこに効果的に挿入される、岸田繁による音楽。
淡々と進んで行く日常を、まるで映画「スタンドバイミー」のパロディが始まるよ、とでも言わんばかりに、音で気分を加速させたり減速させたりする。

子どもたちのキラキラした冒険が、ろくでもない大人二人が救いの無い犯罪への深入りに変わっていくかのように。

多田は、優しさに裏切られた男。
行天は、優しさを受けられなかった男。
最初は他人事として見ていたあなたも、最後には自分のストーリーに置き換えて観ていることだろう。

■くるり・岸田繁の、初ソロ名義の劇伴に注目

前述したように、劇伴をくるりの岸田繁がやっているということで、この映画に興味を持った方も多いかと思うが、ここでは“くるりワールド”というよりも、岸田繁の頭脳が分割され、それぞれに発展を遂げている、と言っても良いような音世界を聴くことができる。

過去に、くるりとして映画主題歌や本編音楽に参加した作品は、2003年の『ジョゼと虎と魚たち』、2004年の『リアリズムの宿』、2007年の『天然コケッコー』などがあったが、今回は岸田繁としての初ソロ名義での活動となる。

バンド名義ではなく、個人名義での劇伴ということで、彼が普段バンドではなし得なかったような室内楽的音楽を聴くことが出来る。
それは、まるでマイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」で見せたような、ハーモニーを極力排した形で、複数のメロディーが危ういバランスで綱渡りを遂げており、それがまさに映像との良き相乗効果をあげている。

また、ミニマムなアコースティックギター二本だけの素朴な世界。
それらがいろいろな側面を見せつつ、ストーリーが終わった時、初めてバンドサウンドが聴こえ、映画はカタルシスとともに幕を閉じていく。

くるりファンならずとも、その映画音楽に、ちょっと意識を向けて耳を傾けてみるのものよいだろう。

■映画情報

キャスト:瑛太、松田龍平、片岡礼子、鈴木杏、本上まなみ、大森南朋、松尾スズキ、赤麿児、高良健吾、岸部一徳
監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん
音楽:岸田繁(くるり)

  • minp!音楽ニュース(2015年09月12日)
  • 制作協力:okmusic UP's