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マイケル・ジャクソンを蹴落として、全米No.1に輝いたニルヴァーナの代表作『ネヴァーマインド』

シリアスに語られることが多いニルヴァーナとその代表作である『ネヴァーマインド』。しかし、ニルヴァーナもそもそもはロックファンなら誰もがカッコ良いと思えるバンドだった。ニルヴァーナが持っていた単純明快なカッコ良さはニルヴァーナのドラマーだったデイヴ・グロールが結成したフー・ファイターズが受け継いでいる。

ニルヴァーナが91年9月にリリースした『ネヴァーマインド』はその後、バンドが精力的に行なったツアーが功を奏して、じわじわとチャートを上がっていき、リリースから4カ月が過ぎた92年1月、マイケル・ジャクソンの『デンジャラス』を引きずり落として、ついに全米チャートのNo.1に輝いた。それは単にニルヴァーナという新進バンドがリリースしたメジャーデビューアルバムがいきなり大ヒットになったということだけに止まらず、シアトル郊外からやってきた薄汚い3人組がミュージックシーンに君臨していたキング・オブ・ポップに取って代わったという大事件だった。

それが象徴していたものは何かと言えば、ロックの原点回帰に他ならない。ストリートからの反逆だったパンクロックさえもニューウェイヴというかたちで飲み込み、80年代の10年間で一気に巨大な産業に発展していったロックに今一度、ロックがロックである大きな理由のひとつである荒々しいサウンドに加え、プレイヤーとリスナーが共有できるリアリティーを取り戻したのがこの『ネヴァーマインド』だった。『ネヴァーマインド』以降、80年代を謳歌していたヘア・メタルバンドに代わって、それまでメインストリーム(本流)に対するオルタナティブ(傍流)とされてきたロックアクトが次々にメインストリームでブレイクしていったことを考えれば、ニルヴァーナと『ネヴァーマインド』の功績は計り知れない。

それを認めた上で、フロントマンであるカート・コバーン(Vo&Gu)が自殺しているせいか、どうしてもシリアスに語られることが多い『ネヴァーマインド』を、逆にそういう時代の呪縛からそろそろ解き放ってもいいんじゃないかとここでは提案してみたい。つまり、単純にカッコ良いロックアルバムとして、もっと気楽に楽しんでもいいんじゃないか、と。スターダムの罠に戦いを挑んだカートの魂を少しでも感じ取らなければと思う必要もないし、大成功の反動から洗練されすぎたとその後、このアルバムを否定したカートに気兼ねする必要もない。だって、実際、カッコ良いんだから!

静と動のコントラストを大胆に使い、聴き手に特大のインパクトを与えるニルヴァーナ・スタイルを代表する1曲と言ってもいい「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をはじめ、ここにはフォークロック、ハードコア、弾き語りのバラッド、パワーポップといった多彩な曲が収録され、彼らがグランジというジャンルに収まり切らない可能性を持っていたことを印象付ける。カートが洗練しすぎたと後悔したプロダクションだって、多くの人にアピールできる曲の魅力を考えれば、レコーディングにおけるギミックを使っているとはいえ、洗練しすぎたなんてことはこれっぽっちもない。

たぶん、『ネヴァーマインド』が大ヒットしなければ、逆にカートはなぜこれが受け入れられない?!と憤慨したんじゃないか。若者の鬱屈を歌った時代のアンセムと大歓迎された「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」がそもそもは究極のポップソングを作りたいと考えたカートがピクシーズのスタイルとボストンの「宇宙の彼方へ」のリフを拝借して作ったことは有名な話だが、“ティーン・スピリット”という言葉が使われているせいか、何かのスローガンにも思えるタイトルも元ネタはカートの友人だったビキニ・キルのキャスリーン・ハンナが彼のベッドルームの壁に落書きした「カートはティーン・スピリットの匂いがする」という戯言だった。

“ティーン・スピリット”とは実は腋臭の消臭剤の商品名。当時、カートが付き合っていた女性がこのティーン・スピリットを使っていたそうだ。つまり、“ティーン・スピリットの匂いがする=それを使っているあの子とセックスしているでしょ”という冷やかしがその後、時代のアンセムになってしまうところが曲のインパクトとそれを演奏したニルヴァーナのすごさでもあるわけだけれど、半ばジョークで作ったようなポップソングがそんなふうに過大評価されたことが後々、カートを追い込んだんじゃないかと思うと、なおさら『ネヴァーマインド』を気楽に楽しもうという気持ちにもなるではないか。

  • minp!音楽ニュース(2015年03月20日)
  • 制作協力:okmusic UP's