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『WHO TH eROCKERS』(’80)/ザ・ロッカーズ

ザ・モッズ、ザ・ルースターズとともに、いわゆる“めんたいロック”のひとつに数えられながら、ザ・ロッカーズが演奏していた音楽や彼らが残した作品が語られることは少ない。現在、日本のロックのカリスマとしてリスペクトされているかつてのライバル、ルースターズと比べると、その差はあまりにも歴然としている。しかし、それは過小評価以外の何物でもないと声を大にして言っておきたい。

野郎臭い硬派なバンドばかりだった、めんたいロック勢の中でカラフルなスーツとメイクでキメたグラマラスなルックスを売りにしていたとか、バンドの顔だったヴォーカリストの陣内孝則がバンド解散後、俳優/テレビタレントとして成功したため、もともとタレント志向だったんじゃないかとか、そんなことからロッカーズを軟派…今風に言えば、チャラいバンドだと色眼鏡で見ているストイックなロックファンもいるようだが、今回取り上げる『WHO TH eROCKERS』を聴いてもらいさえすれば、少なくともそれを作った時のロッカーズが最高にカッコ良い――当時の日本のロックシーンにおいて屈指と言えるロックンロールバンドだったことが分かってもらえると思うし、そのカッコ良さを一度知ってしまったら、そんなことは、それがどーした、だから何?!となるはずだ。

『WHO TH eROCKERS』はバンドコンテストで優勝したことをきっかけにレコードデビューのチャンスを掴んだ、ロッカーズが80年にリリースした1stアルバムだ。よっぽどライヴに自信があったのだろう。千葉にある観福寺というお寺に録音機材を持ち込んでライヴレコーディングを敢行。メンバーたちはヨーロッパの古城の地下室をイメージしていたようだが、予算の都合上、“じゃあ、お寺だ”ということになったらしい(なんじゃそりゃ)。決して満足できるレコーディング環境ではなかったが、“なにくそ!”と思ったのか、アルバムのクレジットによると、全14曲(ラストの「SEVENTEEN」と「フェナー先生」はメドレーだから実質15曲)を3時間でレコーディング。見事、血気盛んなバンドの姿を生々しい形で捉えることに成功している。

この時点で彼らが50年代のロックンロール/ロカビリー、60年代のブリティッシュビート、70年代のパンクを換骨奪胎した上で、自分たちらしい表現としてものにしていることにも驚かされるが、何よりも衝撃的なのは、1曲目の「Hey DJ!」からラストの「SEVENTEEN~フェナー先生」まで、全14曲を35分で一気に駆け抜けるそのスピード感だ。ちなみに、じっくり聴かせるスローナンバーは『WHO TH eROCKERS』には1曲も収録されていない。メロコアを経験している若いリスナーにはピンと来ないかもしれないが、あの時代、畳み掛けるようなスピード感をアルバム全体で表現しているバンドは他にはいなかったんじゃないか。圧巻は陣内の“1-2-3-4!!”というカウントがカッコ良すぎる3曲目の「非常線をぶち破れ」から若干テンポを落とした「愚者」を挟んで、「To Be Or Not To Be」、博多の先輩ミュージシャン、YAMAZENこと山部善次郎の代表曲をカバーした「キャデラック」「ショック・ゲーム」「Midnight train」とどんどん加速していく中盤か。リリース当時、このアルバムを聴いて、まるで気が×××ようなそのスピードに脳天が痺れるような感覚を味わったものだけれど、今回久しぶりに聴き直してみたらリリースから30年以上経った現在も圧倒的なスピード感は全然色褪せていなかったのでちょっとびっくりしてしまった。

演奏が速すぎて、情緒的な表現が入り込む隙がなかったのか、セックスの暗喩を交えながら、全曲とっぽい日本語で歌っているにもかかわらず、歌謡曲っぽさ、あるいはフォークっぽさとして表れることが多い日本人情緒みたいなものがほとんど感じられない、ある意味クールともニヒルとも言える感覚もこのアルバムは新しかったと今、改めて振り返ってみて思う。それは当時、ヒットチャートを賑わせている大物のロックバンドからは感じられないものだった。

全編英語で歌い、洋楽の影響をストレートに自分たちの音楽性に反映させるバンドが普通に存在している今となっては珍しいことではないかもしれない。しかし、もう一度言わせてもらうと、当時、そんなバンドは他にいなかった。ロッカーズがその魅力を理解されるには、デビューから解散まで3年の活動では全然足りなかったということだが、そんなところも過小評価されている理由のひとつなのかもしれない。

と、ここまで書いてきて、筆者は後追いのルースターズ・ファンはもちろん、例えば、例えばだが、THE BLUE HEARTS、BLANKEY JET CITY、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、毛皮のマリーズ、THE BAWDIESのファンにもこのアルバムを薦めてみたい衝動に駆られている。ロッカーズも含め、それぞれに唯一無二の個性を持つバンドだけに、それぞれのバンドのファンからお叱りを受けるかもしれないことを覚悟のうえ、書かせてもらうと、前述したバンドのファンならば、ライヴハウスで演奏していた熱気、勢い、そして向こう意気を何の手も加えず、そのままパッケージした『WHO TH eROCKERS』が持っているロックンロールのスリルや、よりリスナーに近い…今風に言えば、ストリート感覚をきっと理解してもらえるんじゃないか、とそんな期待をしているのである。

  • minp!音楽ニュース(2014年07月23日)
  • 制作協力:okmusic UP's