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THE BLUE HEARTSの『TRAIN-TRAIN』はバンド本来のグルーブも剥き出しに!【ハイレゾ聴き比べ vol.3】

シーンにその名を刻む伝説的バンド

日本ロックシーンのレジェンド、THE BLUE HEARTSの説明を改めてここでする必要もない──とも思ったが、結成から30年を数えるバンドである。バンドの中心人物であった甲本ヒロト(Vo)、真島昌利(G、以下マーシー)両名は未だ現役であるものの、THE BLUE HEARTS以降、↑THE HIGH-LOWS↓~ザ・クロマニヨンズと移り変わってきているので、ヒロト、マーシーが過去に在籍していたパンクバンドくらいの認識しかないリスナーも少なくないかもしれない。

若干説明を加えておこう。結成は1985年。サウンドは概ね3コードのR&Rで、テクニックを鼓舞するような演奏や過度なエフェクトはほとんど見られない。歌詞にも難しい言葉はほとんど使われておらず、シンプルと言えばシンプルなロックバンドである。

しかし、87年にインディーズで発表されたシングル「人にやさしく」、同年のメジャーデビューシングル「リンダリンダ」、そして1stアルバム『THE BLUE HEARTS』のシンプルがゆえに力強く、シンプルがゆえに聴く人を選ばないメッセージ性とサウンドは一気にシーンを席巻。後のパンクブームの礎となったのはおろか、その姿勢や、哲学性、文学性を帯びた歌詞は音楽関係者以外にも多大なる影響を及ぼした。日本のロックバンドのオールタイムベストを挙げるとしたら10傑に入る存在であろう。

3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』

『TRAIN-TRAIN』はそんなTHE BLUE HEARTSの3rdアルバムである。同名シングルが人気テレビドラマの主題歌となったことも影響してか、本作はバンドとして初めてチャート3位にランクイン。オリジナルアルバムではバンド史上最も売れたアルバムでもあり、一般層にもTHE BLUE HEARTSの名を知らしめた作品と言ってもいいであろう。

ざっくりとその内容を説明するならば、ブルース、フォーク、カントリーといったパンク以外のジャンルを取り込んだバラエティー豊かな作品である。1曲目「TRAIN-TRAIN」の冒頭での疾走感あふれるドラムロールとブルースハープから始まり、最後の「お前を離さない」の終わりには再び「TRAIN-TRAIN」のサビとハープのソロが聴こえるという円環構造を成しており、所謂コンセプトアルバム的な構成でもある。

次作『BUST WASTE HIP』でバンドはレーベル移籍したこともあって、『THE BLUE HEARTS』『YOUNG AND PRETTY』と併せて初期3部作的な見方をされているところもある。

個々の音が、さらにしっかりと鳴る

まずMP3音源を聴いてみる。バラエティー豊かな作品であると前述したが、とは言ってもTHE BLUE HEARTSである。電子音が過剰に入っていたり、随所にデジタルエフェクトが施されていたりといったことはなく、いかんともしがたいほどにバンドサウンドではある。よって、80年代のバンドにありがちな古臭さもない。

個々の音に関しても、デジタルリマスタリングの効果だろうか、しっかりと立っている印象で、少なくとも劣化している感じはない。例えば「TRAIN-TRAIN」。イントロからいい意味で耳に付くピアノはもちろんのこと、後半でのバイオリンの音色も、シャープなギターのカッティングもクリアーだ。奔放なフレーズを奏でるベースの一方で実直にリズムを刻むドラムという対照的なリズム隊も、THE BLUE HEARTSを聴いていることを実感させられる。少年っぽさを残すマーシーのコーラスもしっかりと聴こえる。変な言い方になるかもしれないが、これはこれで十分な気もする。

では、ハイレゾ音源は──。パッと聴き、音がクリアかつシャープになっていることは確認できる。特に高音。抜けがいいというか、キレが良くなっているのは間違いない。

はっきりと分かる実例をいくつか挙げると、まずミディアムの「ミサイル」。終始シャカシャカ鳴っているのがハイハットなのかパーカッションなのか捉えづらいし、間奏の4つ打ちはカウベルだろうとは思うが確証するまでに至らない感じだ。それがハイレゾではカウベルであること、シャカシャカはタンバリンであったことがはっきりと分かる。

「僕の右手」もそうだ。この楽曲にもまたシャリシャリした音が入っていて、こちらはそれがハイハットやシンバルであることは分かるのだが、キンキンと甲高い音が若干気にならなくはない。だが、ハイレゾにはそれがない。ハイハット自体のランクが上がったような、高額のハイハットに変えたような感じすらする。シンバルの鳴りも同様だ。また、この楽曲ではガットギターが使われているのだが、これもまたはっきりと、ガットギターの柔らかい音色が確認できるのもいい。

「ラブレター」は収録曲中、もっとも音数が多い楽曲だろうが、テンポが緩いだけにごちゃついた感はない。それゆえにハイレゾならではの音像を確認できる最良の楽曲とも言えるだろう。ギター2本のアルペジオのアンサンブル、女性コーラス、オルガン、パーカッション、ストリングス…それぞれの位置関係もよりはっきりとして、楽曲の奥行きがグッと増した印象だ。高音の抜け、キレが良くなっているが、決して低音の感触が何も変わっていないわけではない。

とりわけ注目してほしいのはベース。と言っても、ベースそのものの音が大きく変化している感じではない。音像がシャープになっているのは間違いないが、“シャープ=鋭い”というよりも、残響音が削減されて(大袈裟に言うと)より的確な音が出ているような感じだ。もともとベースのフレーズは奔放なTHE BLUE HEARTSなだけに、その存在感が大きく増したようではないものの、これもまた楽曲に新たなる奥行きを与えているのは異論のないところであろう。

バンドならではのグルーブ感を強調

音像がシャープになることによって個々の音の位置がはっきりとし、楽曲の奥行きが増す。さらに、そのことによって決定的に全体の聴き応えも変わる。最大のポイントはここだろう。

顕著なのは「電光石火」「僕の右手」「無言電話のブルース」、あるいは「お前を離さない」辺りだろうか。よりグルーブが出ている印象を受けるのだ。“そんなことがあるわけない”と思われる人も多いだろうし、自分でも単なる気分の問題かもしれないとも思う。

しかし──筆者は演奏者ではないのでそれを実践することはできないが、グルーブは演奏の微妙な揺れによって生まれると聞く。リズムはジャストにキープした上で、そこに各音が強弱や音階のズレを作ることで意図的に作れるとも言われる。ハイレゾ化で音像がシャープになることで、音の芯と音圧がよりはっきりとなり、各パートの距離感がクリアーになれば、即ちグルーブが強調されることになるのではなかろうか。

THE BLUE HEARTSの名フレーズを拝借すれば、《その音が響きわたれば ブルースは加速していく》(「TRAIN-TRAIN」)ということだ。

まぁ、実際にグルーブ感がアップしているかどうかは聴く人に委ねたいと思うが、少なくともハイレゾは既存音源よりごちゃついた感じが薄まり、楽曲全体が整然とした印象をもたらすことは疑いようがない。

しかも、これが最新の音源だけではなく、30年前の音源もその容姿を露わにしてしまうことが恐ろしいほどに素晴らしいと思う。まさしく《本当の声を聞かせておくれよ》(「TRAIN-TRAIN」)というファンの願いを叶えてくれるのがハイレゾなのだ。

TEXT:帆苅智之

  • minp!音楽ニュース(2016年03月28日)
  • 制作協力:okmusic UP's